大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸家庭裁判所 昭和40年(少)3834号 決定

少年 G・S(昭三〇・四・二生〕

主文

この事件を兵庫県摂丹児童相談所長に送致する。

同相談所長は少年をその行動の自由を制限し或は奪う強制措置のとれる教護院に入所させることができる。

但し、その期間は入所の日から六月を超えてはならない。

理由

本件に係る兵庫県摂丹児童相談所長からの送致理由によれば「少年は昭和三八年頃より乱暴な行動が目立ちはじめ、家出・盗みを繰返えし、同相談所、学校、地域の協力による指導も効果なく悪化するばかりであり、明石学園(教護院)入所の必要を認め、昭和四〇年八月二一日同学園に収容した。しかし入園の日から逃亡を繰返し、一日として落ち着かない状態であり、現状では教護教育不可能と考えられる。従つて明石学園特別監護寮(拘禁寮)入寮の必要を認めるものである」というにある。

よつて審案するに、本件関係証拠によれば、学校において学習中大声を出したり口笛を吹くなどして学習の妨害をなし或は校内校外において窃盗を重ねたり、下級生に乱暴をするなどして社会から疎外されるに至つていることが窺われ、さらに上記教護院収容後も落ち着かず無断外出を重ねており、さらに刑罰法令に触れる行為を重ねる虞が認められる。

鑑別結果通知書によれば少年の知能はI・Q・64で、その発育遅滞が窺われ、人格面においても、自己統制力が弱く、強い神経質的傾向が認められ、環境適応能力がとぼしい外焦点性てんかんの疑も存する。

少年は六歳の時父親を失ない、その後母親の手で育てられて来たものであり、少年の母親に対する愛着や依存固着傾向が強く認められるが、家庭における保護能力は充分ではなく、他方上記の通りの少年の行動歴並びに資質面に鑑みると最早在宅乃至開放的施設における少年の保護育成は著しく困難と認められる。

従つてこの際強制的な措置により専門的施設において少年の安全、保護育成を図る必要が認められるので、少年法一八条二項を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 小林茂雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例